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東京洋酒新聞 【紹介欄】より「曲面印刷の発明と其応用」 [箱木一郎 曲面印刷 ichiro hakogi]

 今日紹介する記事は、祖父の作成して保管していたスクラップ帳の中の新聞記事。 

東京洋酒新聞 昭和4年7月20日(1929年)
【紹 介 欄】
曲面印刷の発明と其応用

―従来の「レーベル」の」代わりに直接瓶に色模様が印刷出来る―
 一体印刷技術は平面状をなす物体に模様付けを為すべく今日まで進歩発達の過程を辿って来てゐる事は衆知の事実である。然るに吾人の日々使用する器物は概ね立体状をなし、而も印刷模様を施さねばならぬ者が沢山にある。ところが印刷技術は平面物体に対して驚嘆す可程発達してゐるが、器物に対しては何等の施す術を有つてゐない。仕方なしに紙に印刷された模様を張付けて間に合わせてゐるが、器物の素材に依つては甚だそぐはないものが多い。即ち吾業界に最も必要なる瓶類の如く鉱物質の者に糊で紙を張付けたのでは、恰も竹に鉄棒を継いだのも同断である。此は当然鉱物質の素材に硝子の光沢と調和の取れる堅牢なる色模様を付与しなければならないと云ふ事は吾人のかねて希望する処であつた。
 ところが必要は発明の母とやら、茲に印刷方法の研究家箱木一郎氏が理論と体験の両面より「曲面体への印刷方法」を完成し、既に帝国特許第八〇〇四六号を初め十余件の権利を得、目下名古屋の日本陶器株式会社並に小倉の東洋陶器株式会社と協同して其応用化の具体的研究を進めつつある次第にて、吾々としては該方法を吾製瓶界にも適用し度く希ふ次第である。
 化粧水瓶の如く全々回収して反復使用せざる者と醸造界の如く頻繁に回収使用するものとは大分模様の強さを異にせざるべからずと思惟するのである。箱木氏には工学士坪井三郎氏とて旧橘硝子工場技師長と云ふ相談相手あり、吾々の希望条件は如何様にも研究される由、折角諸氏の御高見を披瀝して頂き度いものである。
 次に吾々の心配せざるを得ない点は、如何に優秀且経済的であつても登録商標を変へる事は到底出来得ぬ相談乍ら、模様の輪郭も色合もホボ現在のものと同様に仕上るとなれば充分考慮の余地が存するものと思ふ。
 完全に耐久模様が印刷出来れば醸造元は空瓶として市井にコロガツてゐる間にも宣伝が出来、殊に清涼水瓶の場合水に冷やかしても美的商標の*刹脱される事なく、需要者に満足を与え得る事と思ふ。又自社の瓶を完全に回収し得る便宜をも得られよう。
 *「剥脱」か
 次に印刷費の問題であるが、該方法に適合する絶対独特な印刷機械はオフセット印刷機械製造工場として歴史ある濱田鉄工所の顧問技師伊藤魁氏の設計に係り、一日壹萬二千個の印刷五色位をなし得るものを使用する事となる可く、今数字的には判然しないが充分自信があるものの様である。
 因みに箱木氏に照会方希望の向きには本社は喜んでお取次申すであらう。



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